発注ボタンが押せなかった夜。初めての中国輸入で怖かった5つのことと、その手当て
前回の「商品代13,000円、送料など16,000円。Alibabaで初めて発注した日の全内訳」の続きです。
前回は、払った金額の話でした。今回は、その金額を払う前の話をします。
見積もりが確定してから、発注ボタンを押すまで。あの夜がいちばん落ち着きませんでした。
29,031円は、痛い金額ではなかった
冷静に考えれば、29,031円で生活は変わりません。
失っても、働けば戻せる額です。頭では分かっていました。
それでも、確認画面の前で指が止まりました。
金額の大きさより、全額を一度に動かすという事実のほうが重かったんだと思います。相手は、会ったこともない海外の業者です。
その夜は、注文画面を開いたまま閉じました。
怖いことを、5つ書き出した
何が怖いのかを、書き出してみました。頭の中にあるうちは、不安に輪郭がありません。上限もありません。
出てきたのは5つでした。
| 怖かったこと | 決めた手当て |
|---|---|
| お金だけ取られて、荷物が届かない | Trade Assuranceで払う。申し立てができる状態で送金する |
| 届いても、全部が不良品 | 届く前に、A品・B品・NG品の扱いを決めておく |
| 60個、一個も売れない | 30セットを一気に出さない。まず3〜5セットで反応を見る |
| 写真で魅力が伝わらない | きれいな写真より、用途が想像できる写真を撮る |
| 後から真似されて、値崩れする | 売り切って撤退する線を、先に引いておく |
一晩ふくらませていた不安の正体は、この5行で全部です。
ひとつずつ、何を考えたかを残しておきます。
見ず知らずの相手に、先に3万円を払う
いちばん強かったのは、これでした。
商品を見る前にお金を渡す。日本の通販では、意識したことのない順番です。「振り込んだあとに連絡が途切れたら、僕はどうするんだろう」と本気で考えました。
手当てはひとつ、Trade Assuranceで払うことです。Alibabaが間に入る仕組みで、届かない・話が違うというときに申し立てができます。
手数料は乗ります。それでも、初回だけはここを削らないと決めました。
仕組みの中身は中国輸入で最初に気をつけたこと。DDP・送料・MOQ・検品の話に書いたので、繰り返しません。
もうひとつの手当ては、業者の選び方でした。見積もりの内訳を細かく出してくれたところを選んでいます。安さで選ばなかったのは、この夜の怖さが理由です。
「逃げるつもりの相手なら、内訳は書かない」
根拠のない理屈です。でも、あの夜の僕にはこれで足りました。
全部が不良品だったら、という想像
次に怖かったのは、箱を開けたときに使える物が一個もない、という絵です。
不良品がゼロにならないことは、調べて分かっていました。**5〜10%**が普通という数字も見ていました。60個なら3個から6個です。
問題は、想定が外れたときに自分が固まることでした。
なので、届く前に扱いを決めました。
| ランク | 状態 | どうするか |
|---|---|---|
| A品 | 傷も歪みもない | そのまま販売する |
| B品 | 微傷・色ムラあり。使う分には支障なし | 値段を下げて売る |
| NG品 | 割れ・蓋が閉まらない・ひどい汚れ | 売らずに自宅で使う |
届いてから判定を考えると、1個ごとに手が止まります。基準が先にあれば、検品はただの作業になる。そう思って表にしました。
不良を事故ではなく経費として先に引いておく。それだけで、想像の中の最悪がだいぶ静かになりました。
60個、一個も売れない日が続いたら
在庫が部屋を占拠する。副業の失敗談で、いちばんよく読んだ形です。
決めた対策はひとつでした。30セットを一気に出品しない。
最初に出すのは3〜5セットだけ。1週間、閲覧数といいねと売れ行きを見ます。
- 反応が良ければ、出す数を増やす
- 反応が悪ければ、写真とタイトルと価格を直してから次を出す
売れないことより怖いのは、誰にも見られていないと気づかないまま60個を出し切ることでした。
なぜ60個なのか、どう売るつもりだったのかは副業で中国せどりを始めます。初回仕入れは36グリッド収納ケース60個に書いてあります。
送料で利益が消える怖さもありました。そこは前回の記事で数字を全部出したので、ここでは触れません。最初から2個セットで売ると決めたのが、その怖さへの答えです。
写真で伝わらないのは、いちばん静かな失敗
売れない理由が「見られていない」だったとき、原因の多くは写真だと思っています。
同じ商品でも、1枚目で結果は変わります。厄介なのは、それが失敗だと気づきにくいこと。誰も文句を言ってこないからです。
撮り方も、届く前に決めておきました。
- 1枚目は白背景で商品だけ。色違いを並べる
- 2枚目以降は使用シーン。ビーズを入れる、釣り具を仕分ける
- サイズ感が分かる1枚。手に持つか、物差しと並べる
- 最後に注意書き。中国製であること、細かな傷の可能性
スマホと自然光と白い布があれば足ります。上手い写真より、使っている場面が浮かぶ写真。メルカリで効くのはそっちのはずだと考えました。
後から真似されて、値崩れする日が来る
売れる商品には、必ず後から人が来ます。誰でも仕入れられる商品なら、なおさらです。
これは防げません。防げないので、終わり方のほうを決めました。
- 2個セットという、少しだけ違う売り方で出す
- タイトルと写真で見え方を変える
- 値下げ合戦になったら、売り切って次に行く
永久に売れ続ける商品はない。その前提で始めるほうが、粘って消耗するより気が楽でした。
最悪でも、3万円の授業料
最後に、いちばん効いた計算を書いておきます。
対策が全部外れたら、僕はいくら失うのか。
| 最悪こうなる | そのとき起きること |
|---|---|
| 一個も売れず、全部処分する | 29,031円が消える。1個484円の授業料 |
| 半分売れて、半分残る | 30個が部屋に残る。次の仕入れが止まる |
| そもそも荷物が届かない | Trade Assuranceに申し立てる。手間はかかる |
上限は29,031円。それ以上には増えません。
最悪でも、3万円の授業料。
その行を書いたところで、指が動きました。
不安は消えていない。小さくなっただけ
翌日、発注ボタンを押しました。押した瞬間に安心したかというと、そんなことはありません。
やったのは、怖いものに名前を付けて、隣に対策を並べただけです。リスクは1個も減っていません。
減ったのは、分からないまま怖がっている時間のほうでした。
あの夜の自分に言えることがあるとすれば、こうなります。
- 書き出すと5行しかない:頭の中にあるうちは、不安に上限がありません
- 対策が書けた不安は半分になる:残るのは、手当てのないものだけです
- 最悪の金額を先に出す:上限が見えれば、あとは払うか払わないかの判断です
- 判断は届く前に決める:届いてから考えると、目の前の1個に引っ張られます
怖かったのは、金額ではなかった
いま振り返ると、あの夜に怖かったのは29,031円ではありません。自分がどこまで損するのか分かっていないことが怖かっただけです。
上限を書いた紙が1枚あれば、たいていの発注ボタンは押せます。
安心して押したわけではないです。押せる程度まで、怖さを小さくした。それだけでした。
それで十分だったと、いまは思います。
次回は、発注を終えてから商品が届くまでの2〜3週間で何をしていたかを書きます。検品する場所づくり、撮影の道具、梱包材の準備。待っている時間にやっておいたことの話です。