退職金を全額FXに突っ込み、自然災害で一晩で吹き飛ばした話
前回の「救いの神がカードローンを肩代わりしてくれた話」の続きです。
借金を返し始めた数年後、私はまた別の沼に足を踏み入れました。 今度の舞台は FX。しかも突っ込んだのは、人生で初めて手にした大金——退職金です。
結論から言うと、一晩でほぼ全額が消えました。
グループ会社の倒産から、早期退職へ
私が勤めていた会社は、グループ会社の倒産をきっかけに規模縮小を発表しました。 まだ若手だった私も、早期退職の対象になりました。
手にした退職金は、当時の自分にとって人生で初めて見る大きな金額。 しかもその頃、FXで小さな儲けが出ていた時期でもありました。
「この勢いで行けば、退職金を倍にできる」
今振り返ると、信じられないほど傲慢な発想でした。 でも当時の私は、本気でそう信じていたんです。
退職金を全額、FXへ
レバレッジを大きくかけて、ポジションを取りました。 当時のFXは今ほど規制が厳しくなく、少ない証拠金で巨大なポジションが取れた時代です。
| 項目 | 当時の私 |
|---|---|
| 投じた資金 | 退職金ほぼ全額 |
| レバレッジ | 高め(証拠金の何十倍) |
| 心理状態 | 「俺の判断は正しい」 |
| リスク管理 | ほぼゼロ |
最初の数日は、思い通りの方向に動きました。 含み益を見ながら、完全に有頂天です。
「やっぱり俺は相場が読める」
——この「儲かっている時の万能感」が、後から一番こわいものだったと知ります。
自然災害が来た
そんなある日、自然災害が発生しました。 日本の通貨に大きな影響を及ぼす規模のものです。
相場は、私のポジションと真逆の方向に急変しました。
寝ている間に、含み益はみるみる含み損へ。 朝起きてスマホを見た時には、証拠金維持率が崩壊していました。
ロスカット——無慈悲な強制終了
FXには「ロスカット」という仕組みがあります。 含み損が一定ラインを超えると、証券会社が自動で強制決済するルールです。
その朝、私の退職金は、ロスカットによってほぼ消えていました。
画面に表示された残高を見ても、現実感がなかった。
「これ、何の数字だっけ?」
頭がまったく処理できなかったのを、今でも覚えています。
自営業の手伝いから、再出発
退職金が消えた直後、知り合いが自営業をやっていて、その手伝いを始めました。 そのまま雇ってくれることになり、もう一度、人に救われたわけです。
ただし給料は会社員時代より低く、再び 本業+アルバイトの二刀流に逆戻り。
借金の自転車操業の時と違ったのは、奨学金とカードローンを 少しずつ返している段階だったこと。 退職金を失った絶望と、返済を続ける決意が、同時に胸の中にありました。
学んだ4つのこと
① 退職金や一時金を「ギャンブル資金」にしない
まとまったお金が入ると「増やさなきゃ」と焦ります。 でも、一時金こそ 絶対に守るべきお金。攻めるなら、失っても生活が壊れない範囲だけ。
② 「予測不能」ではなく「いつか必ず起こる」
自然災害や地政学リスクは、「予測できない」のではなく「いつか起こるもの」。 それを前提にしないポジションは、ただの時限爆弾でした。
③ 大金は「一点」に置かない
退職金を一つのポジションに全部乗せた時点で、勝負は運任せ。 置けない金額に分けておくだけで、全滅は防げました。
④ 儲かっている時の自分が、一番危ない
負けている時より、勝っている時の自分のほうが危険でした。 万能感は、判断力を確実に鈍らせます。
FXそのものを否定はしません。 ただ、当時の私のような心理状態で大金を入れるのは、投資ではなくただのギャンブルでした。
人生のどん底は、あのロスカットの朝だと、今でも思っています。 でも——そこからでも、やり直せました。
次回は「奨学金とカードローンを完済するまでの数年間」を書きます。 どん底から、どうやって借金ゼロまで戻したのか。続きはまた。