配当より、届く封筒が嬉しかった。株主優待にはまって外食の株を集めた話
前回の「投信2本、ETF4本。元本が半分になった僕が、散らかった投資の持ち物を仕分けた話」の続きです。
持ち物を減らして、口座はやっと静かになりました。
きれいに片づいた棚を見ると、人は何か置きたくなります。僕が次に手を伸ばしたのが、株主優待(株を持っている人に、会社が自社の商品や割引券を送ってくれる制度)でした。
今回は、減った話ではありません。郵便受けに封筒が届くのが楽しくて、外食の会社ばかり見ていた時期の話です。
整理した口座を眺めていて、優待という言葉に引っかかった
投資信託が2本、ETFが4本。整理を終えた口座は、上から下まで数字だけでした。
眺めているうちに、少し物足りなくなります。増えたのか減ったのかは、証券口座を開かないとわからない。生活の中に、投資の実感がまるでありませんでした。
そんなときに目に入ったのが、優待という言葉です。
株を持っているだけで、会社から食事券が送られてくる。ページを開いた瞬間、僕はもう検索し始めていました。
配当は口座に入る。優待は、郵便受けに届く
配当をもらう楽しさは、それまでにも知っていました。毎月お金が入る商品で痛い目を見た回のあとでも、配当そのものは好きなままです。
ただ、配当は数字でした。残高がわずかに増えて、それで終わり。
優待は違います。封筒が届きます。開けると、券が入っている。
この差が、思っていたよりずっと大きかったんです。
| 配当だけの株 | 優待つきの株 | |
|---|---|---|
| 届き方 | 口座の数字が増える | 郵便受けに封筒が届く |
| 気づくタイミング | 明細を見るまで気づかない | 開けた瞬間にわかる |
| 家族の反応 | 特になし | 「今週どこ行く」に変わる |
| 使い道 | 口座に置いたまま | 週末のごはんに消える |
右の列が、当時の僕には楽しくて仕方ありませんでした。
集めたのは、ほとんど外食の会社だった
優待にはいろいろな種類があります。カタログギフト、割引券、自社製品の詰め合わせ。
僕が選んだのは、ほとんどが外食の会社でした。牛丼のチェーン、ファミリーレストラン、居酒屋。券が届いたら、そのまま食べに行ける会社ばかりです。
理由は3つありました。
- 日々の生活で使える:外食する機会はもともと多いほうだったので、券が余るとは考えていませんでした
- 家族が喜ぶ:僕ひとりが得をするのではなく、食卓のほうが変わる
- 利回りより、楽しさで選べる:数字で選ぶと、僕はまた同じ失敗をします
3つ目は、何を買っても上がっていた頃の反省でもありました。数字の良さで選ぶと、僕は途端に調子に乗ります。
単元未満株では、優待の封筒は届かなかった
ここで、ひとつつまずきます。
前回の整理で据え置いた単元未満株(100株単位ではなく、1株から買える仕組み)。あれだけ銘柄を持っていても、優待の封筒は来ません。
優待をもらうには、多くの場合1単元(株を売買するときの基本単位。ほとんどの会社で100株)が必要でした。1株では株主にはなれても、優待の対象からは外れるわけです。
気軽に押していた1株買いと、優待狙いの買い方は、まったくの別物でした。
券が欲しければ、100株そろえる。当たり前の話を、僕はここで初めて知りました。
券が届いた日、家族の反応がいちばん変わった
最初の封筒が届いた日のことは、よく覚えています。
食卓に置いて、中身を見せました。「これで食べに行けるの」と聞かれて、うなずくだけで妙に得意げでした。
それまで、僕の投資の話を家族が聞いてくれたことはほとんどありません。損した話しかしてこなかったので、当然です。
券は、説明がいりませんでした。
その週末、僕たちは券を持って店に行きます。会計で券を出して、支払いが減る。金額そのものは大きくありません。それでも、あの感覚は配当では味わえないものでした。
楽しいだけでは終わらなかった
続けているうちに、いいことばかりではないと気づきます。
引っかかったのは、3つでした。
1つめ。券には期限があります。
有効期限までに使い切らないと、ただの紙です。仕事が立て込んだ月、予定が合わなかった月。使わないまま期限を迎えた券が、実際に出てきました。
もらった時点で得した気になっていたのに、使わなければゼロです。
2つめ。優待は、会社の都合で変わります。
内容が縮むこともあれば、制度そのものがなくなることもある。会社が「来年からやめます」と決めれば、株主は受け入れるしかありません。
僕は、券が毎年届くものだと思い込んでいました。
3つめ。株価は、普通に下がります。
これがいちばん効きました。優待の中身がどれだけ良くても、株そのものは値動きします。
券の魅力で選んだ会社の株価が下がれば、もらった分など簡単に飛びます。
「優待は嬉しい。でも僕が持っているのは、券じゃなくて株だ」
当たり前のことを、含み損の画面を見ながら思い出しました。
嬉しかったことと、困ったこと
並べると、こうなります。
| 嬉しかったこと | 実際に困ったこと |
|---|---|
| 週末の外食が、行きやすいものに変わった | 券に期限があって、使い切れない月があった |
| 家族が投資の話を嫌がらなくなった | 優待の内容は、会社の都合で変わることがある |
| 配当より「もらった」感覚が強い | 中身が良くても、株価は普通に下がる |
| 生活費が少し軽くなった実感がある | 100株そろえるまで、資金がそこに固まる |
左の列は、いまでも本当だと思っています。右の列は、買う前に一度も考えていませんでした。
優待を数字に換算し始めて、危うく同じ道に戻りかけた
いちばん危なかったのは、優待の得の大きさを利回りとして比べ始めたときです。
券の価値を投資額で割れば、数字は出ます。その数字が大きい会社ほど、良い会社に見えてきます。
会社が何で稼いでいるのかを、僕はまた見ていませんでした。
券の魅力と、会社の強さは別の話です。本業が苦しい会社ほど、株主をつなぎとめるために優待へ力を入れることもある。そこまで考えて買っていたかというと、正直あやしいところでした。
「説明できるものだけ持つ」と決めた直後なのに、券の話になった途端、物差しが緩んでいたわけです。
僕がこうしておけばよかったこと
- 使い切れる量だけ持つ:券が余るなら、その優待は僕には向いていません。もらえる量ではなく、使える量で考えればよかったです
- 優待は変わる前提で選ぶ:来年もあるとは限らない。なくなっても持っていたい会社かどうかで決めれば、迷いませんでした
- 優待を外して、その株を見てみる:券の魅力を全部消してもまだ欲しいか。ここを一度通せば、基準がぶれません
- 券の得より、株価の動きのほうが大きいと知っておく:もらえる分と、動く分。桁が違う日は、いくらでもありました
4つ並べましたが、結局は「優待は株のおまけ」の言い換えです。おまけのほうを先に見て買っていたのが、当時の僕でした。
楽しめるかどうかで選ぶ。それが僕の答えになった
いまも、外食の優待は好きです。やめていません。
配当と優待のどちらが正しいか、という話ではないと思っています。数字だけで持ち続けられる人は、それでいい。僕は、封筒が届く楽しさがないと投資が続きませんでした。
元本を半分にした頃、僕は投資を「増やす作業」だと思っていました。優待を集めた時期に、それがやっと「生活に混ぜるもの」に変わった気がします。
券を出して、支払いが少しだけ減る。その小さな一回が、続ける理由になりました。
次回からは、しばらく投資を離れます。中国から商品を仕入れはじめた頃の話に戻って、Alibabaで初めて発注したときの商品代と送料の話を書きます。