税金を払うために暗号資産を売ると、また税金が来る。数年抜け出せなかった自転車操業の話
前回の「資産はあるのに、現金がない。2度目のバブル崩壊で初めて青ざめた話」の続きです。
税金を払うために、コインを売る。その売却で、また利益が出る。翌年、その利益にまた税金が来る。
この輪っかの中を、僕は数年、ぐるぐる回り続けることになります。
納税のために、コインを売るしかなかった
前回書いたとおり、手元の現金はほぼ空っぽでした。それでも納付の期限は、1日も待ってくれません。
残された手は、ひとつだけ。持っている暗号資産を売って、日本円に変えることです。
相場は暴落のまっただ中でした。こんな安値で手放したくない。そう思いながら、納税に必要な分だけ換金して、なんとか払い終えました。
これで一件落着。当時の僕は、本気でそう思っていました。
「払うための売却」にも、税金がかかっていた
翌年の申告の時期。税理士さんから届いた計算を見て、僕は固まりました。
また、利益が出ている。
からくりは単純でした。僕のコインは、ずっと昔に安く買って何百倍にもふくらんだものです。売れば、売却額のほとんどが利益の扱いになります。
たとえ目的が、納税でもです。
「払うために売ったお金にも、税金がかかるんですか」
かかります。売った理由は、考慮されません。売れば利益、利益にはあの重い税率。納税のための換金が、翌年の請求書を生んでいました。
書き出してみたら、きれいな輪っかだった
自分に何が起きているのか、紙に書き出してみました。
| 順番 | やること | 起きること |
|---|---|---|
| ① | 税金の請求が来る | 現金が足りない |
| ② | 払うためにコインを売る | その売却で、また利益が出る |
| ③ | 翌年、②の利益に請求が来る | ①に戻る |
③の行き先が、①なんです。何度たどっても、出口がどこにも書いてありません。
しかも当時の僕は、この輪を自分で速めていました。売ってコインが減ると、不安になるんです。「ここから伸びたら乗り遅れる」と、値が下がるたびに買い戻す。
売れば課税。買い戻せば、次に売るものがまた増える。ペダルは、勝手に速くなっていきました。
これ、消費者金融を回っていた頃と同じだ
ある夜、ふと既視感に襲われました。この感じ、初めてじゃない。
新卒の頃、僕はパチンコで300万円を超える借金を作りました。A社に返すためにB社で借りて、B社に返すためにC社で借りる。あのときも、自転車操業のまっただ中にいたんです。
あれから資産は、何百倍にもふくらんだはずでした。それなのに、やっていることの形が同じ。払うために借りるか、払うために売るか。漕ぐのをやめたら倒れる乗り物に、僕はまた乗っていました。
「まえの生活に、戻ってる」
情けなくて、その夜はもうチャートを開きませんでした。
電卓が出した答えは「いずれ現金が尽きる」
情けなさの次に来たのは、危機感でした。
この輪、いつまで回せるんだろう。電卓を出して、ざっくり数えてみました。売るたびに、手持ちのコインは減ります。税金は、売るかぎり毎年やって来ます。相場が上がり続けてくれない限り、いつか必ず、売るものがなくなる。
このまま暗号資産だけに頼っていると、現金が足りなくなる。
計算は、はっきりそう言っていました。ぐるぐる回っているだけに見えた輪っかは、実は少しずつ縮んでいく渦でした。
人生で初めて、「お金の勉強」を決めた
それまでの僕は、稼ぎ方しか見ていませんでした。
どのコインが伸びるか。次の波はいつ来るか。そっちの情報だけは、必死に追いかけてきたんです。税金のこと、現金の置き方、資産の守り方。お金を守る側の勉強は、一度もしたことがありませんでした。
稼ぐ力だけでは、この渦から出られない。数字に突きつけられて、やっと観念しました。
人生で初めて、「お金の勉強」を始めることに決めました。
ずいぶん遅い一歩です。でもこの一歩が、このあと僕のお金の景色をぜんぶ変えていくことになります。
僕がこうしておけばよかったこと
- 納税用の売却にかかる税金まで、先に計算へ入れる:払う額ぴったりではなく、翌年の課税ぶんまで少し多めに換金してよけておけば、輪はもっと浅くできました
- 不安で買い戻さない:減らしたコインをすぐ買い直すのは、課税のきっかけを自分で増やすだけでした
- 出口の計画を、稼ぐ計画より先に作る:いつ・いくら現金化して、税金をどう払うか。この設計図がないままの利益は、形を変えた請求書でした
3つ目が、この税金編ぜんぶを貫く反省です。
税金編5本ぶんの、授業料
この税金の話は、最大55%の衝撃から始まって、今回の自転車操業まで5本続きました。
ふりかえると、つまずいた場所はぜんぶ同じです。稼いだあとのことを、稼ぐ前に考えていなかった。それだけでした。
ルールを知らずに白目を剥き、複雑な計算に頭を超えられ、税理士さんを探して駆け回り、現金が尽きて青ざめ、最後は納税のための売却にまで課税される。どの痛みも、順番をひとつ入れ替えるだけで軽くできたものです。
稼いでから学ぶんじゃなくて、学んでから稼ぐ。
授業料は高くつきました。それでも、あの自転車操業が僕を初めて机に向かわせてくれたのだから、ぐるぐる回った数年も無駄ではなかったと思っています。
次回は、少し毛色を変えて、人生で初めてお金の勉強を始めた話を書きます。